朝起き、一杯のコーヒーを淹れる。
「今日はお腹に優しく、カフェインレスにしよっか」
「うん、そうしよう」
じっくりと、落としたコーヒー。
幻想的な青が広がる、お気に入りのマグカップに、コーヒーの水面が揺れている。
水面に映るその口元は、無表情なようでいて、ほんの少し、ほころんでいた。
ほんの少しの微笑みとともに、彼はコーヒーをすする。
「ああ、今日は寒いな。」
でも、手先の冷たさと、体は何層もの布たちによって守られている。
「なんか、あったかいな。」
彼の心は、微笑を浮かべる。
「なんか、懐かしいな。」
昔、ばあちゃんちによく遊びに行っていた。
冬のばあちゃんちは、ストーブがないと、床が氷のようだった。
でも、ひとたびストーブの「ギギギ、、、、ボンッ!」と、燃え盛る音が聞こえると、部屋は安心感と、暖かさと、ちょっとだけ香る灯油のにおいに包まれた。
あの瞬間、とってもだいすきだったなぁ。
そして今、あの頃感じていた、どこか懐かしい気持ち。安心感の中で全てが起こっているような、そんな感覚。
それが確かにここにある。
あの頃の僕は、まだココにいたんだね。本当に嬉しいよ。
彼はまた微笑を浮かべた。